再び披露宴

6/9
前へ
/201ページ
次へ
「アリスちゃんって、食べさせるの上手だよね。ヘルパーさんの素質あるよ」 「ホントに?」 元気は嬉しそうに照れる。 「俺さ。ヘルパーさんを頼もうかと思ってるんだけど、怖い人だとイヤでさ」 「漣くん。あなた実家暮らしなんだから、ヘルパーなんて必要ないでしょ」 拓真はハンバーグを頬張りシャンパンを飲んだ。 「ヘルパーさんに手伝ってもらえば、一人暮らしだって出来るかもしれないだろ…。」 ためらいながら“一人暮らし”と口にする。 「無理ですよ。きちんと就職も出来てないでしょ。自分で出来る事と出来ない事とどっちが多いですか?夜、一人の時に激しい痙攣が起きたらどうするんですか?車椅子から落ちたら?ヘルパーが来るまで何時間も待ってるんですか?」 「タク!そこまで言わなくてもいいだろ…」 慧も実のところは複雑な気持ちだ。 「タクには分からないよ。お前には、手も足も、まともなのがくっついてるもんな」 「ええ。分かりませんよ」 拓真は漣の目をじっと見つめる。 漣は拓真から視線を外して自分の手を見た。 力を入れてみたが、動いたのは左手の親指だけ。 「いつまでも、家族のお荷物でいるわけにはいかないんだよ。お兄ちゃんの世話にはなりたくないんだ。桃に厄介者扱いされるのもゴメンだよ」 「俺が面倒見てあげますよ。オニイサマ」 「ふんッ。冗談だろ。気持ち悪い呼び方するな!」 ふてくされて横を向く漣に反して拓真は笑顔だ。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1000人が本棚に入れています
本棚に追加