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「アリスちゃんって、食べさせるの上手だよね。ヘルパーさんの素質あるよ」
「ホントに?」
元気は嬉しそうに照れる。
「俺さ。ヘルパーさんを頼もうかと思ってるんだけど、怖い人だとイヤでさ」
「漣くん。あなた実家暮らしなんだから、ヘルパーなんて必要ないでしょ」
拓真はハンバーグを頬張りシャンパンを飲んだ。
「ヘルパーさんに手伝ってもらえば、一人暮らしだって出来るかもしれないだろ…。」
ためらいながら“一人暮らし”と口にする。
「無理ですよ。きちんと就職も出来てないでしょ。自分で出来る事と出来ない事とどっちが多いですか?夜、一人の時に激しい痙攣が起きたらどうするんですか?車椅子から落ちたら?ヘルパーが来るまで何時間も待ってるんですか?」
「タク!そこまで言わなくてもいいだろ…」
慧も実のところは複雑な気持ちだ。
「タクには分からないよ。お前には、手も足も、まともなのがくっついてるもんな」
「ええ。分かりませんよ」
拓真は漣の目をじっと見つめる。
漣は拓真から視線を外して自分の手を見た。
力を入れてみたが、動いたのは左手の親指だけ。
「いつまでも、家族のお荷物でいるわけにはいかないんだよ。お兄ちゃんの世話にはなりたくないんだ。桃に厄介者扱いされるのもゴメンだよ」
「俺が面倒見てあげますよ。オニイサマ」
「ふんッ。冗談だろ。気持ち悪い呼び方するな!」
ふてくされて横を向く漣に反して拓真は笑顔だ。
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