再び披露宴

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「俺さ、進路で悩んでユキちゃんに相談したの。卒業しても相談にのってくれる先生なんていないよ」 元気でも悩みはあるらしい。 実家の洋食屋は弟が継ぐことになり、料理人になる選択はなくなったのだが、大学卒業後は、就職をするか大学院に進学するかで悩んでいた。 「おいらも。教育実習に行った時にたくさん相談したよ」 慧は子供の頃から、自分の事は自分で責任を持って行動する手のかからない子だった。 そのせいか教師とコミュニケーションを取る機会は少なかった。 「俺、東山先生は俺のことがキライなんだと思ってた」 「漣くんがイジイジしていたからです」 拓真が呆れ顔で言う。 「入学式なんてナメクジみたいにイジイジしてたよね」 「リぃダぁ~!!いや。あの時は俺が悪かった。反省してます」 漣はイタい過去をつつかれた。 でも、それを笑い話に変えてくれた、この仲間達に感謝している。 「あの頃の漣くんは可愛かったですよね」 「タク、あの頃ってなんだよ?今は可愛いくないみたいな言い方やめてよね」 漣は口を尖らせる。 「顔が小さくて、声も高かったし、目なんかクリンクリンで女の子みたいに可愛いかったよね。おいらマジでタイプだったもん」 「あいしゅくん大好きぃって言ってくれてたんだよね」 「バカ。言ってねぇよ」 漣は真っ赤になった。 「両手を前に出して、あいしゅく~ん。ギュウして下さいっ!ってオネダリされたから、何度も抱きしめてあげたじゃん」 「おいらも。たくさんハグハグしてあげたよね。あとね、撫でて。撫でてって、頭を出してくんの。ものすごく甘え上手だったよ」 言いたい放題に言われっぱなしだ。 「どこで間違って、悪態つくような子になっちゃったんでしょうねえ?」 「うるせーよ!」 漣は、みんなにいじられるのも好きだったりする。 「ねぇ。おいらたちの出会いって最悪だったよね。なんであんな騒ぎになったんだっけ?」 慧が言うように、この5人の最初の出会いは最悪なものだった。 あの出会いから、ここまでの友情を築けたのは奇跡みたいなものである。 「漣くんのせいだよ」 「俺!?ちがうよ。タクが余計な事を言うからでしょ」 「ちがいますよ。あのヘタレが駄々をこねたからです」 「みんなだよ」 慧はふにゃっと笑った。
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