入学式

3/8
前へ
/201ページ
次へ
「あれ。キミあの時の?やっぱりそうだ!あ~良かったぁ」 漣は耳元の騒がしい声に顔を向けた。 「覚えてる?鉛筆貸してもらった。ほら!ほら!」 漣は覚えていた。 入試の日、筆箱を忘れて泣きそうだった少年だ。 「ありすがわげんきくん」 「そ!そ!そーだよ!覚えててくれたんだね。キミも合格したんだね!合格発表の時も制服の採寸の時も会えなかったから、落ちちゃったのかと思って心配してたんだよ。もうね、知らない人ばかりだから心細かったの。また会えてちょー嬉しいよぉ。仲良くしようね」 元気はマシンガンのように一気に喋った。 「漣くん。こちらの騒がしい人と知り合い?」 秀人は皮肉を込めて言った。 「あっ、そうだ!れんくんだ。そうだ!そうだ!れんくんだったよね!!ねぇねぇ。れんくん、こちらの小さい人に紹介して」 元気も切り返した。 「小さいってなにさ!」 「騒がしいってなんだよ!」 「ちょっ。二人ともやめてよ」 漣は間に入ろうとするが、秀人と元気は戦闘態勢に入っている。 「小さいから小さいって言ってるんだよ。制服ダブダブでしょ!!」 「ダブっ…うっ」 秀人は一番気にしているところをつかれた。 「もおー。漣くぅん。こいつ誰なんだよぉ」 秀人は手足をバタバタとして暴れだす。 「秀人くん、落ち着いてよ。ありすがわくん、ごめんね」 「なんで謝るんだよ!俺悪くないよー!」 身長のことを指摘され、秀人は完全にスネた。 一度機嫌を損ねるとやっかいだ。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1000人が本棚に入れています
本棚に追加