入学式

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担任が入ってきた。 「入学おめでとう。このクラスの担任の東山真之です。24歳。独身です。1年間宜しくお願いします。担当は英語です。サッカー部の顧問をしています。入部希望者募集中です」 東山は大学を卒業して3年目の若い教師だ。 去年・一昨年と高校部で教鞭をとっていた。 3年目の今年、中学部に移り初めて担当クラスを受け持つことになった。 東山は爽やかな雰囲気で、細身のグレーのスーツがよく似合っている。 「かっけぇ~!!」 秀人は東山に一目惚れし、この瞬間にサッカー部への入部を決めた。 「入学式まで時間がありますね。早く皆さんのことを知りたいので、自己紹介をして下さい。名前を呼ばれたら前に出て、自分の名前を大きく書いて下さい。最初は有栖川元気君」 「はい!」 元気よく手をあげ前に出た。 「有栖川元気です。千葉に住んでます。えーと…。入学出来て嬉しいです!」 緊張してうまく自己紹介が出来なかった。 ハイテンションだがまだ詰めが甘い。 「次、織作慧君」 慧はきれいな字で名前を書いた。 「織作慧です。絵を描くのが好きです。将来は歯医者になりたいです」 そう言って、ふにゃっとした笑顔を見せる。 この頃から癒やしの素質は備わっていた。 自己紹介をする慧を拓真は優しい目で見つめる。 やっと会えました。 キャプテンサトル。 何人かの自己紹介が続いた。 「次、西園寺秀人君」 「はぃい!」 緊張して声が裏返った。 名前を書く時、すこしズルをして爪先で立った。 この頃の秀人は、身長が低いことが唯一最大のコンプレックスだったのだ。 「西園寺秀人です。去年の夏までイギリシュ…イギリスに住んでいました。エコ活動に興味があります。リサイクルやねんろう…燃料資源について勉強したいと思います。将来はサッカー選手になるのが夢です。宜しくお願いちま…します」 カミカミの秀人を見て拓真は鼻で笑う。 「やっぱりヘタレだ」
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