1000人が本棚に入れています
本棚に追加
ヤバい!ヤバい!
元気は猛スピードで疾走中。
今日からいよいよ一学期が始まる。
新入生達は少なからずの希望を抱き、今日を迎えた。
勿論、この男は例外だ。
-キーン コーン カーン コーン
チャイムが鳴った。
今日は始業式。
全校生徒が体育館に集合している。
「秀人くん。有栖川君が来てないんだけど…。休みかな?」
漣に言われなくても秀人は気付いている。
まさかの退学第一号?
いくらなんでもそれはないだろう。
いや、自分のバカさに気付いたとか?
それならありえるかも…などと考えを巡らせる。
-バタバタバタバタ
「おはよう!電車乗り間違えちゃって大変だったよ。セーフセーフ!」
元気が今朝もハイテンションでやって来た。
「初日から遅刻?全校集会だよ」
秀人は苦笑しながら声を掛けたが、元気は気にとめる風でもない。
「漣くん、おはよう」
元気は当然のように漣の横に座った。
「おはよう」
漣の顔色が明るくなったのを見て、秀人は複雑な思いに襲われる。
漣の笑顔が自分以外に向けられている。
初めてのことに秀人は戸惑う。
嫉妬?
喜ばしい事なのに…。
素直に喜べない自分に嫌悪感すら覚える。
校長の挨拶は長い。
「昨日といい今日といい、連日の原稿作成お疲れさまです」
秀人は心にも無いことをつぶやいてみる。
何でもいいのだ。
何か言葉を発しないと不安なのだ。
集会後は一年生だけが体育館に残された。
主な教職員が整列している。
東山は昨日のスーツ姿とは打って変わって、黒のジャージというラフな服装。
「かっけえ~!」
秀人の淡い初恋が始まった。
校長と教頭は挨拶だけをして退席した。
各クラス担任や教科担当の紹介。
服装をはじめとする校則の説明。
学校案内のVTR鑑賞。
退屈な時間が流れた。
結局、午前中は体育館で過ごした。
最初のコメントを投稿しよう!