自分達だけでいい

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~プロローグ①~ 黒猫が横切ったら不吉だとか 黒猫の云われは昔から悪いものばかりだ。 なら 黒猫を飼った俺はどうなるのだろう? あれは今でも覚えてる。雨の降ってた夕方のことだった。 絵を描いて生活してた俺は今日も売れなかった絵を持ちながら家路に着く道を歩いてた。 ふと公園の前を横切ろうとしたときダンボールに黒い物体がいたのが目に入った。 俺はその時それに何故か惹かれて近寄った。 それは 黒い毛並みに青と赤のオッドアイをもつ神秘的な猫だった。 不思議な魔力にかかったように俺はそいつに近寄り手を出した。 「お前捨てられたのか…ッ!」 するとそいつは手を出した途端引っ掻いてきた。 警戒してる。 「…大丈夫だ…暴れるな…怖くない」 そう言いながら抱こうとするもするりと逃げられ。 「よっぽど怖い目にあったんだな…こんなに綺麗なのに…人間は身勝手だから…」 こいつが遭ってきた出来事はわからないけど 「ごめんな…お前が遭ってきた出来事は俺の想像をはるかに超えてひどかったんだろ?」 暴れる猫を無理やり捕まえて抱き寄せる。 「はっ…離せっ!」 「おまっ…喋れたんだ…」 拒否られたことより、喋ったことの方が驚いた。「どうせ君だって忌み嫌うんだ!偽善者のくせにっ!」 「……偽善者…そうかもな…でも俺はお前を見捨てない」 「なっ!」 なんとか立ち上がることに成功した。 「はっ離せと言ってる!僕はここで死にたいんだっ!」 「死ぬなんて悲しいこと言うなよ」 「悲しむヤツなんかいな…「俺が悲しい」 まっすぐ目を見つめて本気を伝える。 「お前が死ぬと俺は悲しいよ?」 「……」 目を見開き驚いた顔をした。 「急に信じろとは言わない…だけど一人は寂しいし俺なんかしょっちゅうへこたれるし…だから……」 「俺が寂しいから…一緒に来て?」 黙ったままで返事はないし相変わらず暴れてる。でも僅かに暴れる度合いが減った気がして、俺はそのまま連れ出した。 これが俺と……"むくろ"の出会い。
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