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「それに救われたとはいえ、相変わらず偽善的なエゴイストね」
「そうだな。アリスに普通に生きて欲しいなんて、ただの俺の我が儘だ」
そんな事は分かっている。だから、俺はそれが『アリスの為』だとは言わない。
それもこれも全て承知した上で、俺は自分の胸を力強く叩く。
「だから、自分の我が儘の為にアリスを護る! アリスに普通の生き方さえさせない全てからな!」
言いたい事だけ言ってアリスにニッと笑い掛けた。
そんな俺を見て、アリスは呆れたみたいにため息をつく。
「……ッ……」
聞き取れない位小さく呟き、アリスが俺の顔を手で押し退ける。
「て言うか、顔が近い!」
「ッブ……!」
鼻っ柱を押されて変な声が出てしまう。
「……フンッ」
アリスはそっぽを向いて歩き出してしまった。
※※※
翌朝、都内にある三階建ての新しいビルの前にアリスが一人で立っていた。
このビルは佐々木が所有する事務所のひとつで、ビル全体が法律相談や心理相談を受ける相談所みたいになっているとの事だった。
俺達の考えた作戦は非常にシンプルだ。顔の知れていないアリスが佐々木に相談を持ち掛け、殺人の教唆をさせる。シンプル過ぎるけど、下手に複雑な作戦にしたらちょっとした事で破綻すると考えたからだった。
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