プロローグ

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その若い女性の言った通り、確かに問題無かった。銃器で武装しようが、チンピラに毛が生えた程度の連中相手に苦戦する筈もない。 「やれやれ……」 その男は耳に当てていたケータイを畳んで胸ポケットに押し込む。 その時、足元に倒れていた黒服が立ち上がり、懐に隠していた拳銃をその男に向けた。 「死ねェ!」 「嫌だね」 その男はすぐ隣に積み重ねてあったコンテナを片手で掴み、飛んできた弾丸をそれで防いだ。 「ば…馬鹿な……!?」 本来ならフォークリフトで積み重ねる重量の鉄製のコンテナを、その男はダンボールみたいに軽々と持っている。 「ああッ!」 黒服は拳銃を続けて撃ったけど、その全てはコンテナに弾かれてしまう。 「ヘイパース」 何気ない仕種で男が放るから、思わず黒服はコンテナを受け取ろうとしてしまった。だけど、次の瞬間にはコンテナに押し潰されて、潰れた蛙みたいな悲鳴を上げてしまった。 「た…助け……!」 口をパクパクさせて喘ぐ黒服を、その男は肩をすくめて見下ろした。 「もうすぐ警察が来るから、その人達にでも助けて貰いな」 その時、雲に隠れていた月が現れ、倉庫内を照らし出した。 その男は猛禽類……鷹の様に鋭い目をした、長身の男だった。 「……泣けてくるぜ」 最後に一言ぼやいてから、その男はその場から立ち去った。
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