9017人が本棚に入れています
本棚に追加
/704ページ
その若い女性の言った通り、確かに問題無かった。銃器で武装しようが、チンピラに毛が生えた程度の連中相手に苦戦する筈もない。
「やれやれ……」
その男は耳に当てていたケータイを畳んで胸ポケットに押し込む。
その時、足元に倒れていた黒服が立ち上がり、懐に隠していた拳銃をその男に向けた。
「死ねェ!」
「嫌だね」
その男はすぐ隣に積み重ねてあったコンテナを片手で掴み、飛んできた弾丸をそれで防いだ。
「ば…馬鹿な……!?」
本来ならフォークリフトで積み重ねる重量の鉄製のコンテナを、その男はダンボールみたいに軽々と持っている。
「ああッ!」
黒服は拳銃を続けて撃ったけど、その全てはコンテナに弾かれてしまう。
「ヘイパース」
何気ない仕種で男が放るから、思わず黒服はコンテナを受け取ろうとしてしまった。だけど、次の瞬間にはコンテナに押し潰されて、潰れた蛙みたいな悲鳴を上げてしまった。
「た…助け……!」
口をパクパクさせて喘ぐ黒服を、その男は肩をすくめて見下ろした。
「もうすぐ警察が来るから、その人達にでも助けて貰いな」
その時、雲に隠れていた月が現れ、倉庫内を照らし出した。
その男は猛禽類……鷹の様に鋭い目をした、長身の男だった。
「……泣けてくるぜ」
最後に一言ぼやいてから、その男はその場から立ち去った。
最初のコメントを投稿しよう!