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アリスの身を案じる様な優しい声を佐々木は掛ける。
『もう、肉体的にも精神的にも限界で……』
疲れをにじせるアリスの演技もわざとらしくなくて問題ない。
『それで、労働とは主にどういった仕事ですか?』
『小川の家の家事を中心に』
『家には小川さんと貴女だけでお住まいですか?』
『はい』
『そうですか……二人だけで生活しているのであれば、家事が大変そうには思えませんが……』
『……家が広いのと、小川が神経質な程きれい好きなので、チリひとつ落とせないんです』
佐々木の質問に、アリスは用意していた答えを返す。
『成る程……それは精神的に辛いでしょう』
最初の関門はクリア……か?
アリスと佐々木の会話を聞いているだけなのに、手に汗握ってしまう。
『それで、今日はどうしてここに来れたんですか?』
『小川が一週間出張で、今しか無いと思って……!』
アリスが声を詰まらせる。
『出張は多いですか?』
『基準が分からないので何とも……』
『そうですね。例えば一ヶ月の内、何日程家を留守にする事がありますか?』
『一週間という長期間は初めてです。一日二日というのは今までに何度か……それでも数ヶ月に一回といった間隔です』
この質問も想定していたので、アリスが不自然じゃない程度にスラスラ答える。
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