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春子は、名前の通り…春のように温かい女だった。人を心から愛したのは、最初で最後…もう、春子だけだろう…。
頭の中を、春子の笑顔が、泣いた顔が駆け巡るが…歯を食いしばって、その顔を掻き消した。
そして達也は…俺は龍也って名前でリュウヤと読むんだけど、『名前が似てる』って、ただそれだけで、心許しあうくらいの仲になった。すごい気が合って、辛いことも、嬉しいことも、全て半分。あんなに気が合う仲間にも、もう出逢えないだろう…。
でも…お前しかいないんだ。
達也…お前しか…殺した奴はいない。
「飲み物買いに行く」って言って、少し離れた自動販売機まで行った達也。
そして、「トイレ行ってくる」って言った春子。
あまりにも遅いから、俺は便所に向かって、その時便所から慌てて走り去っていく達也を見た。
そしてアイツは俺に気がついて…。
頭が痛い。
殴られた傷と、憎しみが、ナイフで脳みそをかき出すように痛む。それでも俺は、不審に思われないように、その感情を押し殺し…平然を装って繁華街へと歩きだした。
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