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「さっき言ったぞ、おまえが知る必要はない。そしてこれも言ったぞ……黙れ」
「ッ!?」
ヤクトの纏う雰囲気が変わり、男は後ろに1歩下がった。
男がその身に感じるのはヤクトの殺気、男の目に映るのはヤクトの憤怒の表情。
そしてその目に宿るのは目の前にいる者への恐怖だ。
「そんなに知りたいか?」
ヤクトの問いに男は震えながら頷き、ヤクトは面倒臭そうに頭を掻いて口を開いた。
「なら教えてやる。あの方は──」
それを聞いて男は目を見開き、驚愕に染まった顔で呆然と立ち尽くした。
「あの、本当にいいんですか?」
「だからいいって言ってるだろ。ほら、買うからさっさと渡せ。それとも、俺が金を渡したほうがいいか?」
空き地を出てから20分程度が過ぎ、現在ジクスは女の子と一緒に服屋にいた。
理由は、ジクスが破かれた服を弁償すると言って、半ば強引に女の子を連れて来たからである。
「いえ、お願いします。この恰好で出るのは恥ずかしいですから」
女の子は試着室から顔だけ出して服を渡し、受け取ったジクスは財布を片手にレジへと歩いていった。
(はぁ……よかった、こんな恰好でウロウロするの嫌だもん)
女の子は自分の恰好を見て、服を買ってもらえることに安堵のため息を吐いた。
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