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いいかい、シン。
この世界とは別におじいちゃんが主人公だった世界があるんだよ。
どんな世界かって?
そうだな、個性的な仲間達がいて面白いんだよ。
綺麗な踊り子のシュヴィー、シュヴィー一筋な王様、煙草をくわえているワガママな発明家のレンダル…。
おじいちゃんは主人公だった。
なのに、おじいちゃんはその世界を捨ててしまったんだ。
今でも思うんだ、そのままその世界にいたらどうなってたんだろうとか幸せだったかなって。
だからシン、もしその世界に行くことがあったら…
ツーツー
無機質な電子音がして、おじいちゃんは静かに息を引き取った。
おじいちゃん子だった俺は感情のままに泣きわめいて、おじいちゃんの言葉なんて忘れていた。
今でも思う、おじいちゃんはなにが言いたかったんだろうって。
おじいちゃんが亡くなって3年目の命日。
墓に花を手向け、手を合わせていた。
一瞬、強い風が吹いて俺の帽子はふわりと飛んでいき、それを追いかけることもなく見ていた。
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