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「ああ」
自分の目の前に現れた男の姿を一瞥すると、スパーダは慣れた様子で答えた。
不良を自認する彼の目から見ても、この男の様相は決して穏やかなものではなかった。なにより男が片手に携える抜き身の剣が、その物騒さを物語っている。
「そうか、なら…」
「『言いたいことはわかるな? 俺と闘りあってもらうぜ。おめーを倒したとなりゃあ、この俺の名も上がるってもんだ』……か?」
「なっ…!」
頭をかきながら話すスパーダの言葉に、男は怒りとともに、動揺の色を隠せない。
「そんな驚くことかあ? こんな夜更けにそんな凶器ぶら下げてオレんとこに来るってのはそーいうことだろ?」
「……勘がいいな。それなら…」
「『これから貴様がどうなるかもわかるだろう?』……か?」
「…………ッ!」
一度ならず、二度までも自分のセリフを先取られた事で、男の怒りは頂点に達した。
「メンドくせーからさっさと来いよ、凶器男」
「てめえのそれも凶器だろうがあッ!!」
怒声とともに男が駆け出したのを確認し、スパーダ左腰に差した刀を、鞘ごと抜き取った。
「『凶器』じゃねえよ。こいつは…『剣』さ」
「揚げ足ヤローが!!」
男が言い終わるが速いか、スパーダは剣を下から風を切る音ともに勢い良く振り抜いた。
鞘から抜き放たれ、鋭く光る刀身が現れる。
そして、それまでその刀身を纏っていた鞘は、自分目がけて突進してくる男へ弓矢の如く飛んでいく。
「甘ェんだよ!!」
勢いがあるとは言え、鞘は鞘。傷一つ与えることなく、男の剣の一振りで容易く地面に叩き落とされる。
「死ねやあああ!!」
「『魔神剣』」
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