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実家を飛び出してから、夜に一人でここに来たのは今回で何回目だろう。
さっきまで兄の立っていた空間を見つめたまま、スパーダはしばらく考え込んでいた。
自分は今まで一体何を求めて、この人気がなければ音も存在しない、光と影だけの世界に足を運んでいたのか。
そして、まごうことない自分の意志で来たというのに、何故その度に虚しい感覚に襲われたのか。
それらに対する答えが、今のスパーダには解る様な気がしていた。
今までこの地で感じた事の無かった自信、安堵感、そして暖かさが、何よりの証拠。
「そろそろ戻るか」
今し方の自分のくしゃみ……というより、一段と強まってきた寒さをきっかけに、スパーダは歩きだした。
手に持つ物は何も無い。
夜の森には似付かわしくない、一人の騎士が、そこに居た。
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