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しばらくして、男は休日に映画へ出掛けた。
先日のミスの処理のために休日返上の日々が続き、ひさびさの休みだった。
元来、男は出不精であり一人で映画に行くタイプではない。なぜ映画に行く気になったと言えば、誘われたからである。
誘ったのは、男の勤める会社の総務の女子である。親しくもなく、というより話をしたこともなかったが、どういうわけか帰り際に映画に誘われたのだ。
なぜ俺なんか、と疑問は持ちながら誘いに乗ったのは、その女が男の好みだったからである。
映画を見、食事をし久しぶりに楽しい時間を過ごしたあと、別れ際に男はそれとなく聞いてみた。
「どうして俺なんかを誘ってくれたんだい?」
その言葉に女は少し照れながら答えた。
「だって方程式では相性がとても良かったんですもの。やっぱり方程式の通り、今日はとても楽しかったわ。また会ってくださる」
また方程式か。男はいぶかしむ。しかし好みの女がまたデートに誘ってくれているのだ。深く追求して嫌われるのは避けたい。
そうか、と言って別れた。
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