とある商店

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男がその女のことを思い出したのは、明くる日のことだ。 すれ違った女の香水に嗅ぎ覚えがあるような気がして、記憶をたどると、その女が使っていたものと同じだったことを思い出したのだ。 その女。若い時分に熱烈に恋をした女だ。綺麗な女だった。当然彼女に群がる恋敵は多く、その中で彼女の心を射止めたことは男の自尊心を満足させた。 彼女との若い日の恋の思い出、もちろん他人の思い出であるが、それは男の灰色の人生をバラ色に変えた。当時の女への恋心さえ甦った。 久しく忘れていた感情だった。 最初は思い出を楽しむだけだったが徐々にその女にもう一度会いたくなる。休日に、当時女が住んでいたマンションを訪ねてみたが既に取り壊されてビルがたっていた。 二人の思い出の場所などにも足をむけたが、女に出会う偶然もない。
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