親切な悪魔

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さえない男がいた。なにをしても上手く行かない。仕事も何度も失敗しているし、プライベートも上手くいかない。 ある時、勤め先がかたむきかけないミスをして会社をクビになってしまった。再就職も芳しくない。ささやかな貯蓄も食いつぶし、借金にも手を出す。それがタチの悪い金融業社であり、わずかな借金が倍々に膨れ上がり、取り立て屋に追い込まれた。 人生に行き詰まり、どうしようもなく、悪魔を呼び出すことにした。魂でもなんでも差し出す代わり、なんとか救って欲しかった。 呪文を唱え、念じる。ボンっと煙が巻き起こり、全身真っ黒の、先がとがった尾をした悪魔が現れた。 「私を呼び出したのはあなたですか?」 格好の割に悪魔は紳士的である。 「どうか助けてください」 男は懇願する。悪魔は男をちらりと見やり、まあワケを聞かせてくださいと落ち着いた声で促した。
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