親切な悪魔

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「わかりました、出来る限りのことはしましょう」 悪魔はそう言って部屋から飛び出した。 悪魔は取り立て屋に話をつけ、野蛮な取り立てをやめさせる。男が借りている金融業社を訴え正規の利息に切りかえさせる。 男に職を世話し、まっとうに働かせた。 おまけではあるが、少し年は取っているが可愛い彼女を男に紹介したりもした。 「これで、私と取り引きしようなどとは思わなくなったでしょう」 悪魔はひと仕事終えてタバコに火をつけながら、そう言った。 「なんと御礼を言っていいやら、人並みの幸せを手に入れることができました。ありがとうございます」 男が深々と頭を下げる。なんのなんのと答えて悪魔は立ち去った。 ひとりになって悪魔はため息をつく。 「まったく。あんなさえない男の魂など誰がいるものか。願いを叶えるために魔力を使うのは、身を削られるほど辛いというのに。でも呼び出されたのに契約を断ったなんてバレれば上司から怒られるし。結局呼び出した奴が契約したくないと言わなければ魔界に帰れやしない。あぁ面倒くさい。 最近、まったく価値がないのに、身の程をわきまえない要求をする人間が増えたな」
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