謎の方程式

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あるサラリーマンの男が仕事でミスをした。かなり大きなミスで取引先に迷惑をかけ、処理のために一週間を費やした。 なんとか解決の目処がたち、菓子折りを持って取引先へ謝罪に出向く。 「このたびは大変ご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ございませんでした」 深々と頭を下げる。取引先からの叱責や皮肉のひとつも覚悟していたが、取引先の担当者は実ににこやかに応対する。 「まったく問題ありませんよ。そんなに謝ることなんてないですから」 怒られることを覚悟していた男は拍子抜けして、はぁと間の抜けた返事をする。 その様子に取引先の担当者が気づき、説明してくれる。 「いやいや、方程式ですよ方程式。今回の事は方程式でわかってたんですよ。うまく乗り越えれば業績がアップすることになりますし」 「方程式ですか?」 男は腑に落ちない。しかし笑って許してくれているのだから、藪をつついて蛇を出すこともない。 そうですか、と愛想笑いをして取引先を後にした。
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