謎の方程式

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「すみません。方程式の件で」 警官はそう言った。 また方程式か。男は顔をしかめる。この際、この警官に方程式のことを聞いてみよう。どうやら方程式のことを知らないのは自分だけらしいし、この警官にはなんの遠慮もない。 「すみません。方程式とはいったい何なのことですか?」 「方程式ですか。方程式は方程式ですよ。すみません私にも理屈はわからないんです。でも方程式の理屈をすべてわかっている人なんて世の中にほとんどいないじゃないんですか」 「そんなものですか。みんな理屈もわからずに方程式を使っているんですか?」 「別に珍しいことではないでしょう。車がどういう仕組みで動いているかを正確に知っていますか。知らなくても運転はできるでしょう。パソコンだって普通に使っていますが、分解して組み立てられますか。人間は理屈の分からないシステムでも平気で使えるんですよ。というよりそれなしでは生活が成り立たない」 「なるほど、そうかもしれませんね」 男は妙に納得する。説明に満足したように警官が本題を切り出した。 「それで方程式の結果、あなたは社会にとって有害と結論が出されました。申し訳ありませんが逮捕させていただきます」
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