ショートショート

過剰サービス

ある男に死期が迫っていた。
ありふれた人生であった。それなりに幸福であり、それなりの不満を抱え、それなりに充実した人生。

格別美人ではないが気立ての良い女を妻に貰い、優秀ではないが優しい子にも恵まれた。給料は自慢できないがやりがいのある仕事につき、口の悪い友人に囲まれたにぎやかな日々。

それが突然、終わりを迎える。

病や事故ではない。
あるとき枕もとに人影が現れたのである。青白い顔をした学者ふうの男。これだけならばまだ普通であるが、背中に大きな鎌を背負っている。

「誰だ、お前は」

男は驚いて声にならない声でたずねた。