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申し遅れまして、と丁寧な言葉で前置きしたあと、鎌を背負った男は胸ポケットから名刺を取り出した。
恐る恐る名刺を受け取ると、死神と書いてある。
「死神だって?」
「はい。死神でございます」
死神は真面目な顔で答えた。
「死神がなんの用だ」
男は怯えながら聞いた。生気のない顔、冷たい目。死神といわれればそうかもしれないと納得できるような薄気味悪るさがある。
「すみません。死神の用事はひとつしかありませんので」
「まさか、私を殺すのか」
「いいえ、寿命でございます。あぁ、この鎌ですか、いやこれは私の正体をわかりやすくするためのシンボルみたいなものでして、刃もつぶしてありますから紙も切れません」
死神は聞いてもいないことを饒舌に語った。
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