夢のバクテリア

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空になった小瓶を政府高官に見せる。主任研究員に変化は見られない。 まるでマジックのように主任研究員は、このとおり、と言ってみせた。 「このとおり。体内に毒が入った瞬間に私のバクテリアが無害なものに分解してしまうのです。自白剤も睡眠薬も。化学物質はすべて分解してしまいます」 主任は得意の絶頂である。政府高官も満足そうにうなずいた。 しかし、げほげほと急に主任研究員が咳こんだ。 毒の効果があらわれたのかと緊張が走る。だが主任研究員は片手を上げて大丈夫と答える。 「大丈夫です。どうも先週から風邪をひいてしまって。薬を飲んでいるんですがなかなか治らないんですよね」 研究は失敗だ。政府高官はため息をつく。 「なるほどバクテリアは薬も分解してしまうようだな」
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