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彼はありふれた普通の工業高校生。
頭はクラスでも悪い方では無かった様だが、色んな遊びを覚えて、不要な知識を身に付ける度に、ちょいちょいと、成績が下がっていった。
それでも、彼の高校生活は充実していた。
とにかくテニスが大好きだった。
いつも間にか覚えた、麻雀、ビリヤード、パチンコへ、いつも授業を抜け出して出掛けて行った。
彼は、高校3年生の時有る手術をして1カ月程学校を休んだ。
そのお陰で、高校の単位の出席率が普通の生徒よりも、低くても良いという、サボって下さい的な、甘い出席基準に変わった。
それに応えるように、2時間目から教室を抜け出して、パチンコ屋の開店の順番待ちなんかをしていた。
パチンコで小銭を稼ぐと、それを持って、今度は駅前のビリヤード場に出かけた。
そこの店長とランチしながら、夕暮れまで、ナインボールを楽しんでいた。
別に、当時流行っていた映画の影響を受けた訳ではなかったが、飽きずに、よくもまぁ、通い続けた。
そして、夕方になると、再び学校に戻る。
別に授業を受ける為ではない。
彼はテニスがしたかった。
授業はサボっても、テニスだけは夢中になって、やっていた。
そして暗くなると、部活が終わり、いつものダチの部屋へ集まり、麻雀となる。ダチの部屋は、母屋とは別の離れになっており、徹夜でジャラジャラやるには、うってつけの6畳間だった。
深夜になって煙草の煙が目にしみても、朝日が出るまで、遊んでいた。
そして、朝の通勤通学ラッシュに紛れて、帰宅の電車に乗る。
よく地元の駅で、これから学校に向かう同級生に合った。
「俺はこれから寝るからよ、5時間目位には学校にいくわ」と言い残し、駅を後にして、帰宅した。
タバコ臭い制服にも、朝帰りにも、親は何も言わなかった。
それだけ信頼されている自信はあったし、人生を踏み外してるとは思わなかった。
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