何も分からないままだけど

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「藤崎さんは相変わらず冷めてるな~」 「だから…とっとと―――」  ん?ちょっと待て。今この男あたしの名前を言わなかったか?  あたしは名乗っていないし、唯香だってあたしのことは"せんぱい"としか言ってないんだから、こいつがあたしの名前を知れる筈がない。  じゃあ何であたしのことを? 「あんた、何であたしの名前知ってんの?」 「ん?あれ?まだ教えてもらってなかったっけ?」  駄目だ。何が言いたいかまったく分からない。それとも、もしかして名乗ってたのかな。  はしゃいでた時だとしたら何をしていたか分からないしなぁ。 「はっ!わたしはいったい今までどこにいましたか!?」  軽い頭痛に悩まされていると、極楽から日帰りしてきた唯香がハンカチをこっそりポケットに入れながらキョロキョロ辺りを見渡す。  正気に戻ったのはいいけど、何で盗もうとしてんだか。 「いきなり極楽気分にならないでね」  言いながらポケットに消えたハンカチを取り返し胸ポケットに入れた。 「ちぇ~、惜っしい」  落ち込むなよ。何が惜しかったか知らんけど。
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