第1章~再び、始まり~

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「残念ですね。ベルさんはお休みですから……」 どこに行っても、そういう話題ばかり。ぼくとベルが婚約者という事は、世界中の人が知っている。 ベルのお父さんはオズフォーン・メラード。父さんと同じく大手株式会社の社長。二人は幼なじみだそうだ。今もライバルのようで大親友らしい。 両方とも世界を支える企業となった。 とりあえずぼくはベルに会ってみたいと思う。 「ですが、不幸中の幸いですね」 何の脈絡もなく、校長が言った。 「何がですか?」 ぼくは聞き返した。 「君の席の隣はベルさんなのですよ」 校長先生がぼくを見てニッコリとした。 「本当に良かったですね」 一瞬、腹が立った。ぼくはその思いを押さえて何も言わずにいた。 はぁ……、いいよね……。ぼくと違って、普通に生まれて普通に育ったんだから。普通に暮らせて……。
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