第一章――中途半端と奇々怪々

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本来裏通りの裏の裏の――とやっていけば、表通りに出る事が多いのだろうが、私がいる場所は確かに裏通り。 まぁ理由を言うならば、裏の裏の――とやっていくと、結果として山に面した通りに出てしまうのだ。 もしかしたら、この山を越えれば表通りにでるのかもしれない、誰もそんなことしないけれど。 辺りに建っている工場やその他の建物はどれもこれも廃れていて、色を失っているというか、灰色ばかりだ。 崩れかかっている建物すらある。 そんな中、ぽつんと建っている赤茶色の建物、煉瓦造りの建物。 人目を引くような色、造形をしているが、そもそもこんな裏通りを通る人なんて滅多にいないから、目を引くこともない。 その建物の前で、私はかれこれ一時間、時折ため息をこぼしながら立ち尽くしていた。 「やっぱり誰かについてきてもらったほうがよかったかな……」 この建物に、いや、この建物の中にいる人に、私は用件があってやってきている。 それにも関らず一時間も建物の前で立ち尽くしているのには理由があった。 理由と言うほど大したものではないのだけれど、ただ単に、建物の中に入るかどうか迷っている。 こんな場所に建っているということも、建物の中に入る事を躊躇させる要因ではあるのだが、それよりももっと重大な要因がある。 それは、建物の入口に掲げられた看板だった。 『霊的現象相談事務所(老若男女問わず何方でもお気軽にどうぞ、相談に来られた方にはコーヒーを出しますよ、勿論無料です、お代わり自由です)』 ……なんだろう、一言で表すなら、胡散臭い、だろうか。 霊的現象相談事務所という堅苦しい名称と、後の括弧内のフランクさのギャップが怖い、気味が悪い。  
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