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他人に流され、自分自身を主張せず、好きな言葉は付和雷同という最悪な人間だったのに――今日はちゃんと自分から動いている、自分で解決に向かおうとしている。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと捻る。
ここまで来れたんだ、あと一歩踏み出せばいいだけ……そうすれば、何故だかわからないけれど、今までの私から変わる事ができる気がする。
そんな事を考えながら、木が軋む音をたて、事務所の重い扉を慎重に開いた――。
直後――洪水。
私が扉を開けたことによって、堰を切ったように、事務所内から洪水が発生してしまった。
いや、突然のことで洪水と表現してしまったが、洪水と言っても溢れてきたのは水ではなく――様々な分厚さの本だった。
ハードカバーから文庫本、広辞苑からジーニアスまで、節操のない種類の本が、事務所内から洪水の如く溢れだしてきたのだ。
「え……えぇ……!?」
戸惑いながらも、本に埋もれてしまうことだけは避けるため、とりあえず扉の影に身を隠す。
ただでさえ緊張していたのに、扉を開けた瞬間に本が溢れ出てくるという現象を目の当たりにし、心臓はこれでもかというほど加速していた。
呼吸を落ち着かせながら、本の洪水が治まるまで扉の影でやり過ごす。
……やっぱり、私変な所にきちゃったのかな……。
どうしよう、扉を開けちゃったから、誰かが来たってことはもう中の人には知れているわけで、今さら逃げたって遅いよね……。
むしろ逃げられないかもしれない、逃がしてくれないかもしれない……!
最初からおかしいとは思っていたけど……まさか扉を開けた瞬間に本が溢れてくるほどずば抜けておかしい事務所だとは思ってなかった……。
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