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これはまだ、世界に太陽があった頃のお話…。
そこには、無垢な少女が存在していました…―
『御姉様ーっ!』
薄い桃色の髪が靡く。
快活に手を振る少女は輝かしいばかりの笑顔で、声を上げた。
「マリス、どうしたの?」
そんな少女に応えるのは、車椅子に腰掛ける薄紅色の艶やかな髪の少女。
柔らかい笑みを浮かべ、走りよってくる少女、マリスを優しく見つめる。
「これ、御姉様にと思って…!!」
息を切らすマリス、その手には一輪の小さな花が握られていた。
少しくたびれてはいるものの、その花は生命力溢れる色を放っていた。
差し出された紅く愛らしい花を、少女は受け取った。
「有り難うマリス、とっても可愛い花だわ…。
大事にするわね。」
花を片手に、少女はマリスの頭を撫でた。
照れくさそうにしながらもそれを甘受するマリスは無邪気なまでに笑顔であった。
その、無邪気な子供は
小さな綻びを疑うことを
まだ、知らなかった…―
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