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「おはようございます、マリス様」
「ねぇねぇ、御姉様は?」
世話係のメイドが支度をするなか、マリスは辺りをキョロキョロと見渡しながら尋ねた。
いつもなら姉が挨拶をしに自分の部屋を訪れる時間だった。
しかし、姉の姿は朝から見ていない。
不審がるマリスに、メイドは少しばかり表情を曇らせながら答えた。
「貴女の御姉様、アリア様は少々体調を崩されておりますので…。暫くはアリア様の御部屋には入室されないようお願い致します。」
告げるメイドに不満げに頬を膨らますマリス。
しかし納得したように弱く「ふぁ~い…」と、返事をした。
姉、アリアの体調不良はしばしばあることではあったため、アリアの側には常に医師が付くほどであった。
しかし、マリスは幼いながらにもいくつか不可解なものを感じていた。
1つ、マリスがいくら聞いても周りの人間達はアリアの状態を明らかにはしなかったこと。
2つ、以前アリアの自室に僅かながら血痕があったこと。
「(そして…)」
3つ…、
心の臓を締め上げる、
―鋭い不安と焦燥―
マリスはふと窓を見た。
外は、雨が滲む曇天であった……。
雷が、小さく轟いた。
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