衣川の戦い

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「義経様! 奥州軍の勢いは収まりませぬ!! このままでは全滅ですぞ!!」 「………」 義経は黙ったまま、俯いている。 「義経様?」 「弁慶……。 別れの時が来たな…。 最期の唄と行くか」 義経は太刀、『膝丸』を腰の鞘に収め、弁慶の前に出る。 その顔には深い悲しみが浮かんでいた。 「では、私から…」 弁慶はスゥ…と息を吸い、詠んだ。 『六道の 道の巻にて 待てよ君 遅れ先立つ ならいありとも』 そう言い終えると弁慶は嗚咽し、泣き出した。 (冥界の辻で待ち合わせましょう。 どちらが先に果てる事になろうと。か 弁慶らしい) 義経も同じようにスゥ…と息を吸い、詠む。 『後の世も また後の世も 巡り会え 染む紫の 雲の上まで』 「義経様っ! ッ…必ずや…ッ。 必ずや…ッ!!」 「あぁ。 必ずや生まれ変わろう。 さらばだ。弁慶」 義経は屋敷の奥に消える。 「(何という悲しき運命か…) 義経様の自害の邪魔をする者はこの弁慶が斬る!!」 弁慶は屋敷の門前で大薙刀を構える。
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