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義経は屋敷の中、毘沙門天が奉られている部屋に座る。
(兄弟…、力を合わせて…助け合いたかった…)
義経は腰にある脇差し、『今ノ剣』を抜く。
今ノ剣。
義経が幼少期に住んだ鞍馬寺の主、『東光坊蓮人』が義経が奥州に旅立つ際にくれた名刀である。
義経は今ノ剣の刀身を自分の首筋に当てる。
(さらばだ。皆、静…)
義経は思いっきり今ノ剣で己の大動脈を斬った。
斬った部位から光が漏れ出る。
そして義経は前のめりに倒れた。
一方、弁慶はかなりの矢を浴びたが眼光の鋭さは全く衰えていなかった。
「お、おい!
屋敷の屋根を見ろっ!!」
奥州軍の兵士の一人が叫び、皆は屋根に釘付けになった。
(何だ?)
弁慶も釣られて屋根を見る。
そこには、屋根を突き破り、真っ直ぐ天へと昇っていく光の束があった。
グオオォォォーン!!
光は龍の雄叫びの様な音を出しながら天へと昇っていく。
(義経様…。
とうとう、逝かれたのですね…)
弁慶は涙を流すが、それは束の間だった。
何者か弁慶の胸に矢を撃ったのだ。
「!?」
弁慶は慌てて前を見る。
だが、矢は立て続けに弁慶の体に刺さり、弁慶は主の後を追い、死んだ。
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