衣川の戦い

4/5
1548人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
義経は屋敷の中、毘沙門天が奉られている部屋に座る。 (兄弟…、力を合わせて…助け合いたかった…) 義経は腰にある脇差し、『今ノ剣』を抜く。 今ノ剣。 義経が幼少期に住んだ鞍馬寺の主、『東光坊蓮人』が義経が奥州に旅立つ際にくれた名刀である。 義経は今ノ剣の刀身を自分の首筋に当てる。 (さらばだ。皆、静…) 義経は思いっきり今ノ剣で己の大動脈を斬った。 斬った部位から光が漏れ出る。 そして義経は前のめりに倒れた。 一方、弁慶はかなりの矢を浴びたが眼光の鋭さは全く衰えていなかった。 「お、おい! 屋敷の屋根を見ろっ!!」 奥州軍の兵士の一人が叫び、皆は屋根に釘付けになった。 (何だ?) 弁慶も釣られて屋根を見る。 そこには、屋根を突き破り、真っ直ぐ天へと昇っていく光の束があった。 グオオォォォーン!! 光は龍の雄叫びの様な音を出しながら天へと昇っていく。 (義経様…。 とうとう、逝かれたのですね…) 弁慶は涙を流すが、それは束の間だった。 何者か弁慶の胸に矢を撃ったのだ。 「!?」 弁慶は慌てて前を見る。 だが、矢は立て続けに弁慶の体に刺さり、弁慶は主の後を追い、死んだ。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!