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暑い日差しの中、ベッドシーツを洗う小町の姿があった。
麻布のシャツにスカート、それからブーツ。
小屋には必要最低限の物と、大量のインスタント食品がある。
これだけ有れば十分だ。
インスタントは要らないけど。
シーツを干した後、釣り竿を持って海へ出た。
岩場に居る虫を捕まえて、魚をおびき寄せる餌にする。
「おぉ~!釣れる釣れる!」
あっという間にバケツの中は魚で一杯になった。
小屋に戻って小魚を開き、紐に吊って並べて干した。
それから薪を割り、釜戸に火をおこすと、鍋に水を入れて沸騰させる。
埃が溜まった小屋を掃除し、それが終わるとパンを作った。
釜戸って便利!
「こう云う生活も良いなぁ…」
お嬢様の我が儘も、規律正しい仕事も、勉強も無い。
のんびりした時間。
こうして空を眺め、汗を拭い、時折吹く風に涼む。
問題は…。
「…あの人か…」
お嬢様のお見合い相手。
無愛想で警戒心が強い。
母屋から全く出てくる気配無し。
まぁ、1ヶ月ここで過ごすくらい、何て事ないけどさ。
呑気が一番。
椅子に座り、針と糸を取り出して、解れたスカートを直しながら、小町はウトウトと船を漕ぐ。
本があったら最高だなぁ…。
そう思いながら、小町は目を閉じた。
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