負けないです!

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―翌朝― 小町は朝早く起床すると、離れた場所にあった鶏小屋へ向かう。 鶏を蹴散らし、卵を5つ拾うと、籠に入れて畑へ向かった。 貰える物は貰う。 だが、あの引きこもりに会いたくはなかった。 朝靄が薄れ、オレンジ色の空が雲間から覗く。 良い所なのに、引きこもりのせいで台無しだ。 一度小屋に戻り、バケツを持って岩場へ。 食べられそうな貝を拾ったり、海藻を見つけてバケツに放り込んだ。 すると、いかだに乗って網を引き上げる男性に遭遇してしまい、小町は逃げる様に岩場から離れた。 …が。 足を滑らせ、海の中へ落ちてしまい、見事に濡れてしまった。 「あーっ!もうっ!」 しかも、視界がぼやけて見える。 どうやらコンタクトを落としてしまったようだ。 …何かもう…泣ける…。 だが、メソメソしていても埒があかない。 手探りで岩を伝い、ようやっと浜辺へ戻って倒れ込んだ。 「あーぁ…」 綺麗な空も、ハッキリとしない。 眼鏡…無いもんなぁ…どうしよう…。 絶望的だ。だが、まだ『そこまで』ではない。 両親が他界してしまった時程の絶望ではないのだ。 まだ大丈夫。 バケツも置きっぱなしにしてきた。 せっかく拾った食材も台無し。 「ツいてないなぁ…」 呟いて、目を閉じた。 正しい波の音を聴いていたが、その内バシャバシャと不自然な音を立てる。 「おい!!」 怒鳴り声はあの引きこもりだ。 ボンヤリとした輪郭しか判らないが、あの引きこもりである。 他に誰も居ないし…。 話し掛けるなと言われたし、小町は黙って顔を背けた。 だが、男性はかなり慌てている様で、小町を突然抱き上げた。 「なっ…何するんですか!」 「つべこべ言うな!戻るぞ!」 …はぁ?
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