負けないです!

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ランプの灯りが暖かい。 だが、食卓は依然静かである。 ウーラの料理は素朴ながらも、懐かしい様な、心が満たされる様な味がした。 とは云うものの、居たたまれない沈黙に小町は思わず口を開いた。 「私…そろそろおいとましますね?色々と有難う御座いまし…」 「あぁ!?」 何で怒るの!? 何で睨むのぉぉぉ!! 「…すいません…でも、ウーラさんにこれ以上ご迷惑を掛けたら申し訳な…」 「お前がこの島に来た時から既に迷惑だ」 むっっかつくぅぅぅ!! 睨み合いをしていてもキリが無いので、小町は口をへの字に曲げて不貞腐れた。 「…じゃあ、ボートとか貸して下さい…何とかして帰りますから…」 「ハッ!帰れるもんなら帰ってみろ!ボートなら南の浜辺にあるからな!」 小町は立ち上がり、「お世話になりました」と頭を下げた。 これに慌てたウーラが、駿足で戸口を塞ぐ。 「お前…本当に自分で帰る気か!?」 「…帰れと言ったのはウーラさんです」 「馬鹿!そんな事したら、遭難するか海賊に捕まって売られるのがオチだぞ!」 「海賊なんて居ませんよ。何時の時代の話ですか」 「現代にも居るんだよ!これだから無知は困る!」 またも言い合いが始まってしまった。 長い時間を掛けて、二人は互いを罵倒し合う。 まるで子供の喧嘩だった。 矛盾しているし、理不尽で幼い。 小町は激怒し、皿だのフォークだのを、手当たり次第ウーラに投げつけた。 悔しくて悔しくて、涙が止まらない。 泣き出した小町に驚いたウーラは、我に返ったのかオロオロと慌て出して、小町をなだめ始める。 「私だってねぇ、こんな所に来たくて来たんじゃないわよ!!うわぁぁぁぁん!!」 「こ…小町…!すまなかった…俺が悪かったから…な?だから…泣くな…ごめん!謝るから…!」 「お家帰るぅぅぅぅぅぅ!!」 「こ…小町~!」
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