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「ウーラさーん!ご飯ですよーっ!」
向こうに分かる様に手を大きく振った小町に気付いたウーラは、馬を引き連れてやって来る。
「もう昼か…」
「はい!」
「お腹が空いたと思ったら…」
「だと思いました」
小町が孤島に来てから3週間が過ぎた。
変わり映えの無い毎日だが、小町はこの生活が好きだと実感している。
ウーラとの喧嘩は絶えないが、それでも二人は仲良く暮らしていた。
小町はウーラを、ウーラは小町を理解し始めている。
「今日はですね、ピザを焼いてみました」
「ふーん…じゃあ、外で食べるか」
「お?遂に新作のテーブルと椅子を使うんですね」
「使わないでどうすんだよ…。お前が作れって言ったんだろ?」
相変わらず、ウーラは文句や小言ばかり言っている。
慣れてしまえば右から左。
素知らぬ振りをして聞き流し、小町は早速真新しいテーブルにピザを運んだ。
見晴らしの良い庭の真ん中で、二人は食事をしながら会話を楽しむ。
「…オーパーツ…ですか?聞いた事ならありますけど…」
「Out Of Place Artifacts、略してオーパーツと言うんだ。『場違いな加工品』と云う意味の、その時代に不可能な技術で作られた物。例えば…ナスカの地上絵とか、髑髏水晶、日本では聖徳太子の地球儀がある」
「…何か…面白そうですね!」
「だろ?オーパーツにはロマンがあるんだよ。実際、現代科学の調査で解明されている物もあるし、中には偽造された物もあるんだ」
「…ウーラさんは…そう云った物が好きなんですか?」
「一応、これでも考古学者だぞ?」
小町は唖然として、千切ったパンが手元から転げ落ちた。
…頭の良い人なんだ…。
「この島はな、ちょっとした『遺跡』なんだよ。既に発掘調査は終わってるが、思い入れがあってな…」
だから此処に居る。
引きこもりではなく、何らかの思いがあって、一人で暮らしているのだ。
勘違いしていた小町は、何だか申し訳なくて、俯きながらパンを口に入れた。
「何だ…元気ないな…そうだ!後でオーパーツの資料を見せてやろうか。面白いぞ」
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