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「…ウーラ…さん?」
少しひんやりした海だが、ウーラの身体は温かい。
小町を抱え、泳いだまま、ウーラは仏頂面で呟く。
「…お前となら…良い…」
器用だなぁと感心しながら、小町はウーラを見つめている。
「…見合い!お前なら進めて良いと思ったんだよ!」
何故怒る!
怒らなくったって良いじゃない!
「お前に趣味が無くたって良い!俺と見付ければ良いだろ!ちゃんと家事出来るし、畑仕事だってやるから申し分ないだろ!?家柄がどうとかじゃない!俺が良いと思ったから、俺はお前を選ぶ!そう決めた!」
「…ウーラ…さ…」
「俺は島を出る!正式な見合いはそれからだ!」
この人は…何処までも真っ直ぐなんだ…。
私みたいにまどろっこしい考えなんて持ってない。
一直線…頑固で融通が利かない人…。
「小町!」
「は、はい!」
「俺の名前はウグドラ・クォルタプスだ。年は27。アラブ出身。父親は石油会社の社長で、母親はイギリス人で自動車輸入会社を経営してる。俺は5人兄弟。職業は考古学者だ。身長182、体重は…確か62…だったかな…好きな食べ物は辛い物、嫌いな食べ物は苦い物だ。それから…」
「ちょ…ちょっと待って下さい!こんな所で自己紹介しなくても…!」
「…あ…そうだな」
ウーラはケラケラと笑い、小町は困った様に泣いた。
島と離れなければならないが、ウーラが居るなら、それで良い。
何だか不思議な共同生活だった。
お見合いの身代わりが、本当のお見合いに発展するとは、人生は不思議に満ちている。
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