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本日はお日柄も良く、絶好のお見合い日和…。
「…ウーラさん…」
小町は睨んでいた。
視界は良好。
新しい眼鏡も絶好調。
小町の不機嫌は最高潮である。
「あぁ?俺の格好に文句があるのか?」
今からウーラの両親と会う。
だからこそ、きちんとしたい。
ウーラのスーツ姿は正直な所、格好良いなと思った。
髪もサラサラ。
整えているし、文句の一つもない。
問題は…。
「私…こんなお洋服でウーラさんのご両親に会えません!」
「…似合ってるぞ?どこが可笑しいんだ?」
黒と灰色のストライプに、金の金具。
スーツ姿ではあるが、黒縁の眼鏡に下ろした髪。
「OLみたい!」
若しくは秘書。
もっと淡い色の、綺麗なスーツが良かった。
ウーラは全く分からない様で、首を傾げて口をへの字に曲げて考えている。
「…それは日本人の感覚だろ?まぁ…確かに秘書に見えないでもないが…」
「…やっぱり…」
「膨れるなよ!お前に似合ってると思ったから買ったんだ!全く…これだから女って奴は…」
余計な一言を口に出して、ウーラは慌てて弁解を始める。
「いや…だからだな、俺の親は格好で相手を見る奴等じゃないって事で…中身!そう、中身が大切なんだよ!な?」
「ウーラさんは…自分のお家に帰るだけじゃないですか…私はこれからご挨拶に伺う身ですよ…?そりゃあ、このスーツもウーラさんが買って下さった物ですし、文句なんて言えませんよ…。
でも!私は!お金持ちじゃないし!何で!日本に帰らないで!直行で!ウーラさんの!ご両親に!仲人さんも!居ないのに!言葉も!通じないのに!会うんですか!」
「…そ…そんなに怒る事じゃないだろ!?善は急げって言うじゃないか!」
ここはウーラの両親が居る、ウーラの生まれ育った国。
アラブ共和国だ。
分からない言葉が飛び交う中、ホテルのロビーで言い争う二人。
小町は憤慨しながら泣く上に、未知の緊張で意味も無く怒鳴り散らした。
「島に帰るぅぅぅぅ!ふわぁぁぁぁん!!」
「こ、小町…!泣くな、な?俺が居るじゃないか…大丈夫だから…」
周りを気にしながら、躊躇いがちに小町を抱き締めるウーラ。
小町はウーラにしがみ付いて、地団駄を踏む。
「お前……………可愛いな…」
「何がですかっ!?馬鹿にしよってからにっっ!!」
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