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ホテルに迎えの車。
高級車だ。
紅も好きな車だから小町は良く知っている。
やはりウーラはお金持ちなのだ。
少しづつ、小町は実感していた。
適当に見繕った服もブランドだったし、この眼鏡も中々上等な代物だ。
極度の緊張からか、汗を握り締め、車に乗り込む。
震えた足を気力で進めた。
「…小町…まだ緊張してるのか?」
「…そう…これはお見合い…お見合い…お見合い…駄目な時だってあるし…」
ブツブツと唱える小町に、ウーラは間を置いて、あっけらかんと言い放つ。
「見合いってより、恋人を紹介するみたいだな」
「…え…?」
不意に顔を上げると、ウーラは硬直して歪んだ笑みを浮かべている。
褐色の肌が、少しばかり赤らんでいるのが分かった。
途端に小町も真っ赤になる。
「…そのっ…!あの…だな…何となく…いや、違うんだ!」
しどろもどろになり焦るウーラに、小町も弁解する様に助け舟を出す。
「で…ですよねっ!お見合いって、知らない相手とする事だし、こうやって一緒に行くって普通しませんから、ウーラさんの意見は最もだと思いますっ!あははははは!」
「だ、だよな!そうだよな!?あははははは!」
「「……」」
暫しの沈黙。
互いを意識してしまい、つかず離れずの距離を保つ二人。
居たたまれない雰囲気に、小町は思わず口を開いてしまった。
「もし…もしですよ?有り得ない事かも知れませんけど………ウーラさんのご両親が結婚を承諾したらどうするんですか?」
「…そうなったら…結婚するんだろ?」
「…私と…ウーラさんが…ですか…?」
「他に誰とするんだよ…小町しか居ないじゃないか…」
私と?ウーラさんが?本当に?結婚?したら?
「わ、わわわわわわわわわ、私っ…どうしよう…!恥ずかしいっ!」
「お、おおおおおおおおお、俺とけっ…けけけっ結婚するつっつつつももりなんじゃないのか!?」
そう認識すると恥ずかしい事この上なく、小町は到着するまでずっと俯いたままだった。
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