ご対面です!

6/8
前へ
/92ページ
次へ
少しだけ沈黙を置いた後、ウーラの体重が身体にのし掛かった。 頬に黒い髪の感触と、首筋に掛かる息がくすぐったい。 「…小町…お前さっき、『お見合いだから駄目になっても大丈夫』って言ってたけど、俺は…結構傷付いたんだぞ?お前はこの話しが駄目になっても良いって…本気で思ってるのか?」 ウーラの言葉が、プロポーズに聞こえるのは気のせいだろうか。 彼は決めた事や己の信念を曲げたりしない。 だが、潔さが無い。 諦めない人だ。 だから二人は衝突する。 小町は自分自身を『聞き分けの良い人間』だと思い込んでいたが、ウーラと居ると中々の頑固者だと気付いた。 彼と居た1ヶ月は、楽しかったが、腹の立つ事だって沢山あった。 二人で築いたルールは、話し合って決めた訳ではなく、互いが自然と定めた了解である。 きっと二人は似た者同士だ。 理不尽な喧嘩も、寝てしまえば忘れる仲。 難しい『二人きりの生活』を、小町とウーラは理解し合える。 「…ウーラさん…」 「…何だ…?」 「私…」 「…何だよ」 「ウーラさんの事、好きになって良いですか…?」 ウーラは肩を震わせ、その内ケラケラと笑い出した。 「おま…お前なぁ!」 「あの…重いんですけど…それに…失礼です」 「あぁ?あぁ…すまない」 小町の身体を抱え、ウーラは体勢を変える。 今度は小町がウーラに体重を預けた。 「…一々訊くなよ。俺が断るとでも思ってるのか?俺は訊かなくても、小町を好きになっ………ば、馬鹿!何を言わせるんだ!」 「…今更照れてどうするんですか?さっきからずーっと、ウーラさん、私にプロポーズしてましたよ?」 「…っ!ち、違う!プロポーズじゃなくて力説だ!そう、俺の気持ちであって、プロポーズなんかじゃない!」 「…お見合いで普通、あんな事言いますかねぇ…」 ニヤリと笑って見せたら、ウーラは眉間の皺を寄せて言い訳を並べた。 どうやら図星らしい。 「小町ぃぃぃぃ!」 「私のせいじゃないのに、何でウーラさんが怒るですか!」 「お前が見合いを止めるって言ったからだ!」 幸せな喧嘩ってあるんだなぁ…。 小町はそう思いながら笑ってしまった。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1888人が本棚に入れています
本棚に追加