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少しだけ沈黙を置いた後、ウーラの体重が身体にのし掛かった。
頬に黒い髪の感触と、首筋に掛かる息がくすぐったい。
「…小町…お前さっき、『お見合いだから駄目になっても大丈夫』って言ってたけど、俺は…結構傷付いたんだぞ?お前はこの話しが駄目になっても良いって…本気で思ってるのか?」
ウーラの言葉が、プロポーズに聞こえるのは気のせいだろうか。
彼は決めた事や己の信念を曲げたりしない。
だが、潔さが無い。
諦めない人だ。
だから二人は衝突する。
小町は自分自身を『聞き分けの良い人間』だと思い込んでいたが、ウーラと居ると中々の頑固者だと気付いた。
彼と居た1ヶ月は、楽しかったが、腹の立つ事だって沢山あった。
二人で築いたルールは、話し合って決めた訳ではなく、互いが自然と定めた了解である。
きっと二人は似た者同士だ。
理不尽な喧嘩も、寝てしまえば忘れる仲。
難しい『二人きりの生活』を、小町とウーラは理解し合える。
「…ウーラさん…」
「…何だ…?」
「私…」
「…何だよ」
「ウーラさんの事、好きになって良いですか…?」
ウーラは肩を震わせ、その内ケラケラと笑い出した。
「おま…お前なぁ!」
「あの…重いんですけど…それに…失礼です」
「あぁ?あぁ…すまない」
小町の身体を抱え、ウーラは体勢を変える。
今度は小町がウーラに体重を預けた。
「…一々訊くなよ。俺が断るとでも思ってるのか?俺は訊かなくても、小町を好きになっ………ば、馬鹿!何を言わせるんだ!」
「…今更照れてどうするんですか?さっきからずーっと、ウーラさん、私にプロポーズしてましたよ?」
「…っ!ち、違う!プロポーズじゃなくて力説だ!そう、俺の気持ちであって、プロポーズなんかじゃない!」
「…お見合いで普通、あんな事言いますかねぇ…」
ニヤリと笑って見せたら、ウーラは眉間の皺を寄せて言い訳を並べた。
どうやら図星らしい。
「小町ぃぃぃぃ!」
「私のせいじゃないのに、何でウーラさんが怒るですか!」
「お前が見合いを止めるって言ったからだ!」
幸せな喧嘩ってあるんだなぁ…。
小町はそう思いながら笑ってしまった。
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