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初夏の訪れと共に、小町に降りかかった災難。
現在、小町は亡くなった父親の実家に居る。
…と云っても、父親の弟家族が住んでおり、祖父母は既に他界している…らしい。
親戚から絶縁されていた父や母の事なので、歓迎されていないのである。
両親の葬式以来、久しぶりの嫌ーな対面だった。
「話しが済んだら直ぐにおいとま致します。こちらにいらっしゃる長谷部小町さんの弁護を任せられております、国際弁護士の王嶺蓬(ワンレイホウ)です」
小町の隣で正座をし、頭を下げるスーツ姿の女性は、どうやらウーラ一家と親しい弁護士らしい。
サッパリとした髪にスラリとした体躯、切れ長の目の美人である。
叔父一家は突然やって来た小町に水をぶっかけて追い払った。
だが、同席する嶺蓬が弁護士である事にバツの悪い態度で家の座敷に二人を上げたのである。
「あの馬鹿兄貴とは縁を切ったんだ!財産目当ての話しなら、こっちだって弁護士雇うぞ!」
「その様な話しをしに来たのではありません。長谷部小町さんを養子にした方を探しているのです。こちらの姓は「服部」、小町さんの母方の姓は「鳥飼」…「長谷部小夜子」さんと云う方の所在を伺いたいのです」
「…長谷部小夜子…」
叔父の顔色が一変した。
脂汗を拭いながら硬直している。
実は小町、自分を引き取った「長谷部小夜子」を詳しく知らない。
失望のどん底に居た小町に、何処かの遠い親戚が弁護士を通して養子にすると言われた以来、会った事も連絡先すら知らないまま紅の所へ身を寄せたのである。
「長谷部小夜子さんが見つからないとなると、こちらとしても非常に困るのです。小町さんを引き取った方に出て来て頂かないと、婚約が滞ってしまいますから」
そうそう!だから早く教えてよ!
小町は神妙な顔をして叔父を見つめた。
婚約が…そう、婚約が進まな…。
「「婚約!?」」
叔父と重なった声。
叔父一家と小町は嶺蓬に詰め寄った。
「婚約ってどう云う事なんですか!?私聞いてません!!」
「姪が婚約って、どう云う事だ!!」
叔父は嫌いだが、意見は合った。
アンビリーバボー!
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