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「小町さんは私の依頼主であるウグドラ・クォルタプスさんとお見合いをなさって」
「…確かにお見合いらしき事…しましたけど…」
「クォルタプスさんのご両親も小町さんを是非にと申しております」
「…あれで良かったんですか!?」
「クォルタプス家は世界的に有名な石油会社と輸入車販売の会社を営むお宅で、ウグドラさんは長男、考古学者でいらっしゃいます。小町さんはウグドラさんの30回目のお見合い相手で」
「…ウーラさん…そんなにお見合いしてたんですか…?」
「ご両親もようやく、ようやく決まった縁談を早急に進めてしまいたいと仰っております。何より、ウグドラさんが切望していらっしゃいますので」
…ウーラさん…。
歯痒いが、とても嬉しかった。
ウーラがそう望んでくれた事が、落ち込んでいた小町に勇気をくれた気がする。
顔色一つ変えずに淡々と話しを進める嶺蓬は、黒い皮の鞄から何かを取り出し、叔父に差し出す。
「教えて下さったら謝礼をと、クォルタプスさんからです。お好きな金額をお書き下さい」
…ん?何々?
叔父一家も小町も、差し出された用紙を覗く。
「…これ…ドラマで良く見る…小切手!?」
うぇえぇぇぇぇ!!
ウーラさん…マジっすか…?
「決められないようでしたら、こちらで如何でしょう?」
嶺蓬は人差し指を立て、小町も叔父も眉をしかめた。
「1…万…?」
小町が呟くと、嶺蓬は首を横に振った。
「10…万…?」
また嶺蓬は首を横に振る。
「100…万…?」
また同じだった。
嶺蓬は無表情で言い放つ。
「1億です」
「…1億…?」
「はい。ウグドラさんは迷惑の掛からない金額でとの事でした」
ウーラさん!逆に迷惑です!!
暫しの沈黙が続いた後で、大量の脂汗をタオルで拭った叔父は、「100万でも良いですか?」と、たどたどしく嶺蓬に訊ねる。
「少ない…」
ポツリと呟いた嶺蓬だったが、頷いて見せた。
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