たじたじです!

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都内の高級料亭にて、ウーラは笑顔で憎き紅とその両親、仲人を相手にしている。 「これで紅も安泰だな!」 「嫌だわ、お父様ったら!」 なーにが「嫌だわ、お父様ったら☆」だ! ウーラの苦手とするタイプの少女が、豪華な着物をそれとなく着こなし、淑やかに微笑んでいる。 この猫被りめ! 「では、後は二人に任せて…」 仲人の女性が、紅の両親を引き連れて部屋から退散する。 静まり返った個室に、笑顔だった二人のムードがどす黒いオーラに変わっていく。 「…小町を…何処に隠していらっしゃるのかしら」 「何でお前に教える必要があるんだ?」 互いに笑顔だが、言葉には棘がある。 「小町はうちの使用人です。貴方の様に立派な肩書きとお家柄に、使用人如きが失礼千万。迷惑でしょうし、今直ぐ返して頂けませんか?」 「ハッハッハ!失礼千万も何も、小町程出来た女は居ない。俺はアンタみたいな猫被り女と見合いしたつもりも無い。使用人如きと言うなら、小町をこちらに譲って貰えないか」 「小町を…どうするおつもりですか…?」 紅は作り笑顔を止めた。 その表情から殺気を感じる。 だがウーラは気にもせず、満面の笑顔で言い放った。 「当たり前の事を訊くな。結婚するに決まってるじゃないか。俺は小町と世界中の遺跡を回って、幸せに暮らすつもりだ。アンタにとって、小町は『使用人如き』なんだろ?なーんの問題も無いじゃないか!」 ガシャン! 漆喰のテーブルから豪華な食事や器が音を立てて畳に落ちた。 怒りに震え、目の前にある煩わしい物を薙ぎ払った紅は、立ち上がり喚き散らす。 「小町は私が拾ったのよ!私の物よ!小町がアンタみたいな野蛮な男に汚されるなんて許せない…許された事じゃないわ!」 「…私の…『物』ねぇ…。小町はアンタのせいで自由に生きられない。アンタがそう云った扱いをするから、小町の心は不安定なんだよ。…小町は俺が貰う!小町はな、『物』じゃない!よってお前に小町の居場所を教えるつもりもない!小町は俺の妻になる!どんな事があっても、『俺達』は諦めない!」
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