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お人形はお人形らしく。
施された化粧に、綺麗に巻かれた髪。
上品なドレスを着た小町は、隣で楽しそうに笑う紅とは目を合わせない。
リムジンに乗って向かう先は、会員制の豪華客船である。
ディナーを満悦しながら船でお見合いとは、金持ちの考えている事は全く解らない。
紅は黒いスーツに身を包み、小綺麗な付き添い人を装っている。
お遊びに抜かりはないのだ。
港に到着すると、紅は小町の為にドアを開け、「お気をつけ下さいませお嬢様」等と畏まる。
相手側の側近であろうか。
こちらにやって来て頭を下げた男性が、紅と何やら言葉を交わした。
「お嬢様、こちらへ」
前を歩く紅の背中を追い、小町は巨大な客船へと足を踏み入れた。
夕日が赤いドレスを照らし、キラキラと光る。
眩しい世界は嫌いだ。
その裏側にある闇を覆い隠す。
本当はドス黒くて気味が悪い。
重い足を引き摺る様に、小町は案内された広い客室へ。
これからお見合い。
相手と普通に話しをするだけだ。
小町は紅の監視を受けながら、お見合いを滅茶苦茶にすれば良いだけである。
…早く済ませたい…。
緊張よりも、早急に終わらせたいと小町は思っていた。
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