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情けないんだか悔しいんだか。
ウーラはその足でとある大学に向かった。
キャンパスの中をズカズカと歩き、慣れた様子で大学の校内にある図書室へ。
そのまた奥にある部屋の扉を殴る様に叩いた。
「おい!教授!居るか!!」
「…そんなに叩いたらまた壊れちゃうよ~?」
背後から声がして、ウーラは振り返った。
「久しぶりですね、ウーラ君」
「相変わらずお若いですね…曽根崎教授」
何年経っても変わらない笑顔があった。
長い髪を纏めた女性がにこやかに微笑んでいる。
年齢不詳とは良く言った物で、彼女は40も過ぎた『自称オバサン』であるが、ウーラと差ほど変わらない若さを保っている。
「惜しいなぁ。もう曽根崎じゃないんだけどなぁ」
「…まさか…結婚し…?」
「うーん…とりあえず中に入ってからにして貰える?」
背中を押されて、懐かしい誇り臭さの漂う部屋に入り込んだ。
古い書物が所狭しと並ぶ大部屋は、以前と変わらず、本があちらこちらに散乱していた。
「まぁ座って座って。今コーヒー出すから」
教授と呼ばれた女性は、ウーラを適当に座らせると、インスタントコーヒーをそこら辺にあったカップに入れ、ポットのお湯を注ぐ。
「何?あの島から出て来たなんて、何かあったの?」
「…そりゃ…色々と…」
「あ!じゃあ、お見合いが上手くいったって事ね?良かったじゃない。どう?どんな子なの?」
とても楽しそうに訊ね、ウーラにコーヒーを差し出す。
「…それが…厄介な事になって…」
「厄介な事?」
「…見合い相手…実はすり替えられた使用人だった…でもさ、その使用人ってのが凄く出来た奴なんだよ…。そりゃ、性格は結構癖がある気の強い奴で、俺に喰って掛かる女なんだ。でも泣き虫で癇癪持ちで…でも良い奴なんだ…」
「…珍しい。女の子より考古学優先だった君が気に入るなんて…」
そんな…事も無い…と思うが…。
否定出来ないのでそれ以上は言わない。
「…私ね、君が言う通り結婚したのよ。ほら、『ビビっと来た』みたいな?運命って言うか…あぁ、私この人になら人生託しても良いかなって思った。ごめんねぇ?私の場合何の問題も無かったからアドバイスして上げられないや」
只、聞いて欲しかっただけだ。
それなのに、何故か腹が立つ。
恋に障害があって燃えるとほざく奴の気が知れない。
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