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「…所で、教授の事を何て呼べば良い?」
「別に曽根崎でも構わないけど…今は『長谷部潤』だから…」
長谷部?
「長谷部…小町も長谷部だ…」
「…小町?もしかして長谷部小町ちゃん?親御さんが火事で亡くなった子…とか?」
驚いた。
こんな所に繋がりがあったとは。
「その子、義姉さんが養子にした子なのよ。でもねぇ…義姉さん、養子にした子に会えないって嘆いてたわ。複雑な事情があるらしくて、血の繋がった娘さんらしいんだけど…」
「…はぁ!?何だそれ?」
「長谷部のお家ね、結構有名な優秀一家なのよ。お義父さんが学者さんで、私の旦那さんも心理学では有名な人なんだけど、義姉さんはこれまた有名な作家さん。本名は長谷部小夜子だけど、ペンネームは『服部圭二(ハットリケイジ)』って言うのね。ずっとフランスに住んでるわ。服部圭二さん本人が小町ちゃんの父親で、小町ちゃんを育てた母親が…子供を産めない方だったんですって。若い頃から注目されてた義姉さんは、子育て出来る状況じゃ無かったのよ」
「だから小町を託したのか?」
「多分ね。会いたいけど会えないって、そう云った事情ならあり得るわよ。結構複雑らしいし、養子にしたのは良いけど、それ以降…連絡が取れず終い」
「そんな馬鹿な話し…」
言い掛けて遮ったのは紅の言葉だった。
『小町は私の物よ!』
小町が長谷部小夜子を『親戚のおばさん』と言っていたが、知らない訳がようやく分かった。
紅が仕組んだ事だ。
小町を誰にも渡さない為…。
「教授!長谷部小夜子と連絡取れないか?俺と小町の幸せが掛かってるんだよ!」
ウーラはかなり必死だった。
詰め寄ってくる嘗ての後輩からは気迫を感じる。
「私ばっかり幸せになっちゃ申し訳ないものね?分かったから分かったから、落ち着い、ね?」
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