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適当に入った空港内の喫茶店で、小町は呑気に軽食タイム。
嶺蓬がコーヒーに口を付け、少し黙ってから小町に告げた。
「小町さん、先程から私達…誰かに後を付けられてます」
口に運ぶ予定だったサンドイッチの中身が、ボトンと皿に落ちた。
「…誰に…ですか?」
「きっと猪鹿の手の者でしょう」
…何で?何でそこまでされなきゃいけないの?
紅は執拗に小町を探している。
大切なお人形を、必死で取り戻そうとあの手この手を使って追い回す。
「…わた…私…どうしたら…」
「…小町さん。猪鹿家にいらっしゃる以前に、猪鹿紅と面識はありましたか?」
突然訊ねられて、小町は否定した。
両親が亡くなる前に紅と会った事はない。
…多分…。
「貴女はご両親が亡くなった後、猪鹿紅から直々に来て欲しいと頼まれたんですよね?」
「…はい…困っていた私を見つけたからって…そう言ってました」
「可笑しいと思いませんか?貴女は長谷部小夜子さんの養子になったのに、本人と会った事すら無い訳ですよね?猪鹿紅はそれを長谷部小夜子さんから承諾を得て、貴女を引き取った。長谷部小夜子さんの所在が分からないのに、何故でしょうね。…誰かが手引いてしている様に思います」
「私…両親の事…何一つだって知らないのに…何だかややこしいです…」
「…お母様のご実家、伺ってみますか?」
嶺蓬が予想していた事は、まるでドラマの様な非現実的な内容だ。
だが、小町には知る権利がある。
自分自身の為に。
自由になる為に。
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