たじたじです!

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「小町ちゃん。私が知っている全ては、貴女にとって辛い現実だけれど…それでも知りたい?」 謎が謎を呼ぶ『長谷部小夜子』と、小町の存在。 今更「知りたくない」と、逃げる等出来ない。 知れば傷付く。 だが、知らなけば進めないのだ。 「お願い…します」 覚悟を決めた小町に、裕美は頷いた。 「貴女のお母さん、私のお姉様ね。貴女の本当の母親ではないの。圭二さんとお姉様は、『共有者』だった。お姉様がフランスへ留学していた頃、突然倒れたって連絡があって…お嬢様…白血病に侵されてたの…治療すれば…子供は産めない身体になるって…」 『裕美ちゃん…私…生きてどうするのかな…』 「随分弱ってた…日本に帰るより、フランスが好きだったお姉様は、フランスの病院で治療を受けたの。家族で一時フランスに居たわ。そこで私は圭二さんを紹介されたの。若いのにフランスの三ツ星レストランで修業して、夢を持った人だった。お姉様は圭二さんを尊敬してた。慕っていたけど、圭二さんには恋人が居たの。それが長谷部小夜子さんよ。とっても素敵な人だった…本が好きだった私は、作家と云う夢を持った小夜子さんに強い憧れを抱いていたわ」 遠い目で過去を見つめる裕美は、少し笑って肩を落とす。 「…それでね、お姉様にドナーが見付かったの。ドナーは…小夜子さんだった。小夜子さんは勿論、ドナーになるって言って下さったの。奇跡だったわ…神様はお姉様を見捨てなかった…助けてくれたのよ。圭二さんも小夜子さんも私も家族も、とても喜んでた。お姉様はどんどん良くなって、病から解放された…!定期的な治療は必要だけど、生きてくれただけで嬉しかったの」 「…お母さんが…病院に行ってたのは…」 「病気の再発を防ぐ為よ。お姉様は小町ちゃんを置いて死ねないからって、口癖の様に言ってたわ。小町ちゃん、きっと分かったと思うけど…」 長谷部小夜子が産んだ子供。 それが私なんだ。 「小夜子が作家になって、有名になるまで早かったわ。テレビや雑誌の取材に引っ張りだこで、貴女を妊娠しながら幾つもの連載を抱えていたの。小夜子さん、精神的に参ってしまって…子供は産まない、そう言った。圭二さんとお姉様は反対したの…」
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