たじたじです!

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夕日が差し込み、子供達が家路に着く楽しそうな声が聞こえる。 「…私…紅と小町ちゃんを会わせたら駄目だって…そう思ったの。あの子は女王様…本当の友達なんて居なかったわ。小町ちゃんは底抜けに明るい子だったから、友達も多くて…でも…紅は小町ちゃんの存在を知ってしまった。猪鹿の夫と、あのレストランに食事に行ったって…案の定、あの子は小町ちゃんを気に入ったって…それから小町ちゃんの様子を伺いに何度も行っていたらしいの」 小町は全く覚えていない。 紅はずっと探していた『お人形』を見付け、観察していたのだろうか。 世界は自分を中心に回っていると信じている紅の、恐ろしい部分だ。 「…今の主人は私を心配して、一緒になろうって言ってくれた。彼はね、私の高校の同級生だったの。猪鹿家での私は母親なんかじゃない…『お人形』…だったわ…」 小町と同じだ。 紅の為だけに生きる、未来も無い『お人形』である。 「ある晩…お姉様から連絡があったの。次の日は小町ちゃんの誕生日だから、一緒にお祝いして欲しいって…紅はそれを聞いてしまった…行くとねだったわ。でも私は小町ちゃんが心配で…珍しく怒ったの。駄目です!って…。紅は父親にその事を告げ口した」 『お母様が紅を怒った!大切なお友達の誕生日パーティーに行きたかっただけなのに!紅、小町ちゃんともっと会いたい!小町ちゃんが欲しい!』 「…あの人に何を言われても構わなかった…でも…ゾッとしたわ…我が子なのに、恐いと思ったの…小町ちゃんを『お人形』として見ていたあの子が…。圭二さんとお姉様が亡くなって…紅は凄く喜んでたわ…『お人形を迎えに行かなくちゃ』って…はしゃいだのよ…」 猪鹿家は、お金持ちは、何だって出来る。 だから小町は、紅の『お人形』だった。 全てから小町を遠ざけて、そして弄ぶのだ。
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