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都内の歓楽街にあるモーテル。
夜中だと云うのに、ギラギラと光るネオンが眩しい。
この場所を選んで正解だったな…と、ウーラは思いながらベッドに寝そべっている。
有線から流れる歌をボンヤリ聴きながら、小町の到着を待った。
隠れ蓑がこんな場所だと小町が知って、怒鳴られても構わない。
何も厭わない。
小町と一緒に居られるなら…。
部屋の電話が鳴り、ウーラは慌てて受話器を取った。
『嶺蓬です。小町さんがそちらに向かいました』
ハァ…良かった…。
安堵の息を吐く。
『私はこれから長谷部小夜子さんに連絡しようと思います』
「いや、長谷部小夜子とは既に話しを付けた。明後日には日本に帰国するだろう。空港まで迎えに行ってやってくれ」
『分かりました。また連絡致します』
「あぁ。すまない」
受話器を置くと、ドアの隙間から小町がこちらを覗いていた。
「…ウーラ…さん…?」
「…こ…こここ小町じゃないかっ!ま…まぁ、中に入れば?」
笑顔が引きつる。
何かが起きる訳でも無いが、場所が場所なので意識してしまう。
小町がゆっくり近付いて来ると、ウーラは生唾を飲んで身構えた。
「これには理由が…」
「ウーラさん!」
予想外だった。
抱き付いた小町に唖然とし、固まるウーラだったが、小町が胸の中で泣き叫ぶのである。
「ウーラさぁぁぁん!会いたかったのぉぉぉぉ!うわぁぁぁぁん!」
「…小町…」
…そうか…小町は知ってしまったんだな…。
ゆっくりと、小町の背中に腕を回し、強く抱き締めた。
「…小町…お前…良く此処まで我慢したな…本当に…良く我慢したよ。お前はもう頑張らなくて良いからな…?」
囁く様に優しく、そう言って髪を撫でてやった。
「…こま…」
グゥゥゥー…
沈黙。
「…お腹…空いた…」
自分に正直な奴だなぁ。
ウーラは微笑んで、小町からゆっくり離れた。
「何か食うか?」
「…はい…お願いします…」
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